ウェブはバカと暇人のもの

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ちょっと息抜きのつもりで読んだんだけど、意外と興味深い内容でした。
著者の主張を一言でいうと、「ネットが素晴らしい可能性を秘めているというのは幻想だ。ネットはもう進化しないし、あなたの人生を変えることもない」ということになると思います。ネットへの過度の期待に対する、非常に冷めた主張が展開されています。

1章「ネットのヘビーユーザーはやっぱり暇人」では、ブログやウェブサイトなどの記事に対して、クレームや誹謗・中傷をするようなコメントを書き込む人について取り上げてます。「祭り」と称して違法行為をブログなどで公開した人を必要以上に追い詰めるような現象が起こることがあるけど、そこまでやるこたないだろうと。そもそも叩いてる人たちは別に被害者じゃないのになんでそこまでいじめるのか?それは「暇だから」。ってな辛口なコメントがw

また、3章「ネットで流行るのは結局テレビネタ」では、テレビとネットの関係性について書かれてます。その中で、あ〜なるほどと思った部分がありました。著者の意見ってわけではないんですけど、「テレビの時代は本当に終わったのか?」という節。

テレビCMは昔から見られてないし、同時にある程度は見られている。
つまり、別にここ10年で変わっていないのです。一方で変わったのはインターネット環境です。
一千万人規模の人がブログで自らの声を発信し始めた。
そのうちの何人かがブログで「テレビなんて見ていない」と書き、
それまでマスコミや広告代理店に届かなかった声が聞こえてしまったために
慌てているのが実情だと見ています。

たしかにそうかも、と思った。テレビを見る人の人数はさほど変わっていないけど、一方でネットが普及して今まで入ってこなかった情報(テレビを見ない人がいるという情報)が入ってきやすくなったと。実際はそれはごく一部の意見なのに、マスコミや広告代理店がそれを大衆の意見として過大に認識してしまっているということです。

ただ、やっぱり今でも一番影響力があるメディアはダントツでテレビってことは間違いなさそう。それに比べると、ネットの影響力なんて可愛いものだと。そもそもブログのネタの大半はテレビで見たことが元になっているようで、なんだかんだいっても人はほとんどの情報をテレビから得ているんだなーって思いました。ネットが普及したとか言っても、その中の情報の多くがテレビからの情報だっていうなら、結局テレビの情報が形を変えて目に入ってくるようになっただけなんだな。

あと、他の情報源として雑誌・新聞を引き合いに出して、「テレビ・ネットユーザと雑誌・新聞ユーザはかぶらない」という主張が興味深い。
メディア別ユーザ像という2次元の図(横軸が「忙しさ」、縦軸が「所得の高低」)があって、そこでは、経済紙を読む人は所得が高く、忙しい領域に位置づけられ、逆にテレビやネットをよく活用する人は所得が低く、暇な領域に位置づけられていました。一概にこの図のようになるとはいえないし、傾向としては確かにこうなるかもなーと根拠もなく思いました。所得を増やしたければまず情報源を変えろ!ってこってすなw

4章「企業はネットに期待しすぎるな」は、ネットでウケるものとテレビでウケるものは違うから、企業はプロモーションする商品がどちらに属するのかを見極めてマーケティングを考える必要があるという主張。

最後の5章で、「ネットがあろうがなかろうが、人間は何も変わっていない」という主張で締めくくってます。

もちろん、多少は知的で生産的なコミュニティは存在するし、
ネットを使ってさまざまなものを生み出している人はいる。
だが、多くの人にとっては暇つぶしの多様化をもたらしただけだろう。

情報収集を効率的にできるようになったなどの恩恵はあるけど、結局人間の本質的にはあまり変わってないんだなということですな。